行動科学で不安を和らげる!子どもが安心できる家庭のつくり方
私たちの教室に通ってくれているYくん。いつも元気な、今年から中学2年生の男の子です。
ただ、Yくんのお母さんは
「今年に入ってから反抗期なのかあんまり口を聞いてくれないんです…。」
とよく電話でお話されていました。
そんな中突然始まった休校生活。
Yくんがお母さんのことを嫌っているわけではないということを、私は知っていました。
ですが、家族で一緒にいる時間が増えれば増えるほどお互いストレスもたまっていくもの。Yくんとお母さんがどんなふうにお家で過ごしているのか、私は少し気になっていました。
休校期間中も定期的にYくんの勉強についてお母さんと電話でお話をしていました。
お家でのYくんの様子を聞くと、「意外と毎日真面目に机に向かっているので拍子抜けしました。Yのこと、少し見直しました。」と嬉しそうに話していました。
ただ、その後少し沈んだ声でお母さんは続けました。
「Yが勉強している時に、私、干してあった洗濯物をたたんでYの部屋に持って行ったんです。『ここに置いとくからね』と一言声をかけたのですがYは聞いてるのか聞いてないのかなんだかそっけなく『うん』と言うだけ。今思うと、勉強中に声をかけたのがよくなかったのかなって。私今頃心配になってきてしまって…。」
休校期間中、ずっと一緒にいるから鬱陶しがられてるのでは?と心配になってしまったそうです。
私は、Yくんは決してお母さんのことを嫌ってるわけではないと話したのですが、あまり実感が湧かないようでした。
電話を切る直後、「休校が始まって、なにかと家でやらなくちゃいけない家事が増えて…。私も神経質になりすぎてるのかもしれませんね。」とお母さんは笑ってらっしゃいました。
でもその笑い声はどこかさみしそうでした。
5月も終わりに差し掛かった頃、Yくんのお母さんから電話がありました。
「どうしても先生に聞いていただきたいことがあって…」
そう前置きしてYくんのお母さんは話し始めました。
休校最終日のこと。
明日から分散登校が始まるという日、お母さんがいつものように夕ご飯後の洗い物をしていると、珍しくYくんが、キッチンにいるお母さんのところまで来ました。
驚いたお母さんは洗い物をやめて水道の水をとめ、Yくんに目を向けたそうです。
すると、Yくんはこう言いました。
「休校中、家事大変だったよね。ありがとね。」
そして、Yくんはまた自分の部屋に戻っていったそうです。
お母さんは、一瞬Yくんが何といったのか分からず、しばらく呆然としました。
しばらくして、Yくんがさっきはっきりと
「ありがとね」
と言ってくれたことを思い返して涙が出そうになりました。
そして、「やっぱりYくんと家族のために頑張りたいな」と思ったそうです。
Yくんのお母さんは本当に嬉しそうに、話してくださいました。
その話を聞いて、私はYくんがいつも教室で見せる優しい眼差しを思い出していました。
突然始まった休校によって、各家庭でいろんな出来事があったと思います。
もちろん、良いことも悪いことも、そのどちらともいえないことも。
自粛によって普段よりも仕事が忙しくなってしまったり、家事の負担が増えてしまった人は、この5月を区切りとして一度自分自身に「お疲れ様。」と優しく声をかけて欲しいと思います。
勿論、明日からいきなり日々の忙しさから解放されるわけではありません。でも、その言葉が自分自身の明日への活力に繋がることがあります。
自分が頑張っていることで確実に助けられている人がいるということ、そして自分自身も誰かの頑張りに助けられているんだということを忘れずに、また明日から再スタートしていきたいものですね。