家庭で増える“言葉のすれ違い”を防ぐ方法

最近、保護者様からこんな声をよく伺います。
受験が近づく11月は、長期戦の疲れと焦りが重なり、親も子も気持ちが揺れやすい時期です。
一生懸命やっているのに結果が出ない――そのとき、必要なのは「もっと頑張れ」と声をかけることではなく、“努力の質”を見直すことかもしれません。

この時期に集中力が続かない、覚えたことが定着しないという現象は、「やる気不足」ではなく、脳と心の疲労」によるものが多いです。
行動科学では、人の行動は「強化されることで維持される」と考えます。
つまり、努力を続けるには「成果が感じられる」「ほめられる」「達成感がある」といった“報酬”が必要です。
しかし受験後半になると、目に見える成果が減り、テストの点も伸びづらくなります。
「努力しても報われない」と感じると、その“報酬”が弱まり、行動の維持が難しくなるのです。
これは怠けではなく、長期的努力を続けたからこそ訪れる自然な現象=“強化の限界点”です。
保護者様ができる最初のサポートは、「疲れているのに頑張っている」その事実を認めること。
それが、再び前に進むエネルギーの最初の火種になります。

この問いに、行動科学的な正解は「完全に止めずに“負荷を変える”」です。
つまり、休む=ゼロにするのではなく、「やることの質と量を調整する」こと。
たとえば、
長時間勉強の代わりに、“1時間だけ集中”+短い達成感を設計する
苦手教科に取り組む前に、得意分野で“成功体験”を入れる
「自習しなさい」ではなく、**「今日は○○の問題3問だけやろう」**と明確に行動を定義する
このように、行動のハードルを下げつつ“できた”を感じられる仕組みをつくると、脳の報酬系が再び活性化します。
結果、意欲も集中力も自然に戻っていくのです。

多くの保護者様が見落としがちなのは、「努力の量」ではなく「努力の設計」です。
行動科学では、「続けられる行動」を生み出すために、行動の前後を整えることを重視します。
たとえば、
**先行条件(行動を起こすきっかけ)**を変える:学習前のルーティンを決める、時間を固定する
**強化(行動の結果)**を変える:達成後の小さなご褒美や承認の言葉を与える
「やる気を出させる」よりも、「やらずにいられない環境をつくる」方がはるかに効果的。
この“行動の再設計”が、疲れた脳にもう一度火をつけるカギです。

この時期に「頑張らせすぎない勇気」を持つことも、立派な支援です。
行動の質を見直すためには、一度ペースを緩めることも必要です。
大切なのは、立ち止まることを“後退”ではなく、“調整”ととらえること。
休息を入れることで、脳は記憶を整理し、理解を定着させます。そして、また動き出せる余力が生まれる。
行動科学が示す「休息も行動の一部」という考え方を、ぜひこの時期の受験勉強に取り入れてください。
「頑張っているのに伸びない」ときは、頑張り方を変えるチャンス。
行動を止めずに、仕組みを変える。その再設計こそが、受験終盤に“伸びる子”を生む秘訣です。
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